宇都宮地方裁判所 昭和63年(わ)416号 判決
(被告人の表示)
本店の所在地
栃木県足利市通六丁目三一五六番地
法人の名称
株式会社盛田屋商店
代表者の住居
栃木県足利市通六丁目三一五六番地
代表者の氏名
根津栄三郎
本籍
茨城県つくば市大字谷田部六三一七番地
住居
栃木県足利市通六丁目三一五六番地
会社役員
根津栄三郎
大正一一年二月二〇日生
右株式会社盛田屋商店及び根津栄三郎に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立澤正人出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社盛田屋商店を罰金一〇〇〇万円に、被告人根津栄三郎を懲役一年に処する。
被告人根津栄三郎に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社盛田屋商店は、栃木県足利市通六丁目三一五六番地に本店を置き、美容・理容器具及び化粧品の卸売を主たる目的とする資本金四〇〇万円の法人であり、被告人根津栄三郎は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人根津栄三郎は被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、現金売上・売掛金入金の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和五九年四月一日から同六〇年三月三一日までの事業年度における被告人会社の所得金額が二九〇六万〇四一九円であったにもかかわらず、同六〇年五月二九日、足利市大正町八六三番地の二二所在の所轄足利税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一七一万二七四七円であり、これに対する法人税額は既に源泉徴収された所得税額を控除すると零である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人会社の前記事業年度における正規の法人税額一〇八六万九四〇〇円を免れ、
第二 同六〇年四月一日から同六一年三月三一日までの事業年度における被告人会社の所得金額が二五七四万四八六六円であったにもかかわらず、同六一年五月二八日、前記足利税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二九万七〇〇五円であり、これに対する法人税額は既に源泉徴収された所得税額を控除すると零である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人会社の前記事業年度における正規の法人税額九三八万七八〇〇円を免れ、
第三 同六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度における被告人会社の所得金額が四八九〇万四五四七円であったにもかかわらず、同六二年五月二七日、前記足利税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一五三万九八七二円であり、これに対する法人税額は既に源泉徴収された所得税額を控除すると零である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人会社の前記事業年度における正規の法人税額一八五四万七六〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人根津栄三郎の当公判廷における供述
一 被告人根津栄三郎の検察官に対する供述調書二通及び大蔵事務官に対する質問てん末書一三通(昭和六二年九月二九日付け、同月三〇日付け、同年一〇月一日付け、同月二日付け、同月二〇日付け、同年一一月一七日付け、同年一二月一八日付け、同月二四日付け、同六三年一月六日付け、同月一二日付け、同月一三日付け、同月一四日付け及び同年二月一七日付け)
一 根津英雄の検察官に対する供述調書
一 奥山道雄(二通)、奥山丈夫、久保羊子(二通)、柳沢久美子、小滝四郎、小滝浩也及び根津英雄(二通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 被告人根津栄三郎作成の答申書
一 足利税務署長作成の証明書四通
一 検察事務官作成の電話聴取書
一 登記官作成の登記簿謄本
一 大蔵事務官作成の売上高調査書、期首棚卸高調査書、期末棚卸高調査書、受取利息調査書、事業税認定損調査書、現金調査書、割引債券調査書、土地調査書及び代表者勘定調査書
一 押収してある売上ノート橋上利雄作成のもの九冊(平成元年押第六号の六)、同丸山隆二作成のもの八冊(同号の七)、同眞木恭介作成のもの八冊(同号の八)、同田所計克作成のもの三冊(同号の九)、同増山佳一作成のもの八冊(同号の一〇)、同奥山道雄作成のもの八冊(同号の一一)、同石崎丈夫作成のもの九冊(同号の一二)、同根津英雄作成のもの八冊(同号の一三)、同浅見重雄作成のもの八冊(同号の一四)、払込通知票(昭和五九年一〇月から同六二年九月までのもの)一綴(同号の一六)及び売掛金残高表等一袋(同号の一七)
判示第一及び第二の各事実につき
一 大蔵事務官作成の寄付金の損金不算入額調査書
判示第一及び第三の各事実につき
一 大蔵事務官作成の雑収入調査書
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の昭和五九年度分修正損益計算書、脱税額計算書及び法人税査察更生決議書
一 押収してある金銭出納帳(昭和五九年度分)一綴(平成元年押第六号の一)及び払込通知票(昭和五七年二月から同五九年九月までのもの)一綴(同号の一五)
判示第二及び第三の各事実につき
一 被告人根津栄三郎の大蔵事務官に対する昭和六三年一月二〇日付け質問てん末書
一 大蔵事務官作成の償還差益調査書、金調査書、預貯金調査書及び会員権調査書
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の昭和六〇年度分修正損益計算書、脱税額計算書及び法人税査察更生決議書
一 押収してある金銭出納帳(昭和六〇年度分)一綴(平成元年押第六号の二)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の昭和六一年度分修正損益計算書、脱税額計算書及び法人税査察更生決議書
一 押収してある金銭出納帳(昭和六一年度分)一綴(平成元年押第六号の三)
(法令の適用)
被告人株式会社盛田屋商店について、判示第一ないし第三の各事実はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で同被告人会社を罰金一〇〇〇万円に処することとする。
被告人根津栄三郎の判示第一ないし第三の各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 菅英昇)